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主治医に聞いておきたい質問リスト
この記事は、うちの子の治療をやめるかどうかや、安楽死を選ぶかどうかを決めるものではありません。 決めるのは、その子を一番よく知っているご家族と、体の状態を見ている主治医です。この記事は、その話し合いの準備のためのものです。
先にお伝えしたいことを4つだけ書きます。
「この検査値になったら最期」という一本の線はありません。毎日の小さな変化を記録していくと、少しずつ見えてきます
猫は痛みを隠しますが、顔には出ます。 飼い主さんでも、ポイントを知っていれば気づけることが研究で分かっています
ご家族のお金・時間・気持ち・体力を考えることは、わがままではありません。猫の専門家のガイドラインでも、獣医師が考えるべきこととして書かれています
一番後悔が残りやすいのは、急に決めなければいけなくなったときです。元気なうちに「どうしたいか」を家族で話しておくだけで、迷いはずいぶん減ります
猫は、具合が悪くても、痛くても、じっとがまんしてしまう動物です。
「鳴かないし、動かないけど、寝ているだけかな」
最期の時期に、飼い主さんが一番迷うのがここです。
そこで知っておいてほしいのが、「フィーライン・グリマス・スケール(猫のしかめ顔スケール)」 です。カナダの研究チームが作った、猫の顔つきで痛みを見る方法で、次の5つを見ます。
2023年に、この方法を飼い主さんが使えるかを調べた研究があります。[1]
66か国、1,262人の飼い主さんと、獣医師8人が、同じ10枚の猫の写真を採点しました
5つの合計点は、飼い主さんどうしでも「よく一致する」という結果でした(獣医師どうしは「とてもよく一致する」)
とくに耳と目は、飼い主さんでも見分けやすい項目でした。ひげと頭の位置は、獣医師でも難しい項目でした
年齢や性別などで、点数に差は出ませんでした
研究チームは、猫は病院より家のほうがリラックスしているので、飼い主さんが家で見ることに意味があると書いています。病院では緊張して、ふだんの顔が見えないことがあるからです。
元気なときの顔を、正面から写真に撮っておいてください。 比べる「いつもの顔」があると、変化に気づきやすくなります
寝起きや毛づくろい中ではなく、起きて落ち着いているときの顔を見ます
まずは耳と目だけで大丈夫です
「いつもと違う顔をしている」と思ったら、写真を撮って主治医に見せてください
ひとつ注意があります。この研究は写真で、急な痛み(手術のあとなど)を見たものです。慢性の病気や最期の時期にどこまで当てはまるかは、まだ確かめられていません。「痛みを点数で決める道具」ではなく、「変化に気づくきっかけ」として使ってください。
痛みに気づければ、痛み止めなど、つらさを和らげる方法を主治医と相談できます。「気づいてあげられなかった」という後悔を、少し減らせると思います。
もうひとつ、ぜひ知っておいてほしいことがあります。
アメリカの猫の専門の獣医師の団体(AAFP)が2021年に出したシニア猫のケアのガイドラインでは、治療の計画を立てるとき、獣医師はご家族の「4つの予算」を考えるように、と書かれています。[2]
そして、この4つのどれを大事にするかは、ご家族によって違うことを理解して話し合うように、とされています。
最期の時期の治療は、ご家族の生活と切り離せません。
仕事を休んで毎日通院するのが、もう難しい
夜中のお世話で、自分の体がもたない
これ以上の治療費は、正直に言うと厳しい
こう思うことは、愛情が足りないからではありません。猫の専門家のガイドラインでも、決めるときの大事な材料として扱われていることです。
主治医には、遠慮せず伝えてください。「通院を週1回にしたい」「費用はこのくらいまで」と言ってもらえると、獣医師はその中でできることを一緒に考えられます。
「その時」を考えるときに、獣医師がよく使う考え方があります。生活の質(QOL)を、いくつかの項目で見ていく方法です。
海外の獣医師が作った「HHHHHMMスケール」では、次の7つを0〜10点でつけます。
点数そのものより、毎日つけて、変化を見ることに意味があります。
カレンダーに、毎日1つだけ書き込んでください。
○ いい日(ごはんを食べた、そばに来た、日なたぼっこをした)
△ ふつうの日
× つらい日(食べない、隠れている、痛そうな顔をしている)
週に1回、いつもと同じ場所・同じ時間に、顔の写真を撮っておくのもおすすめです。
1〜2週間たつと、「最近×の日が増えてきた」「×が続いたあとに○の日もある」といった流れが見えてきます。
この記録と写真を主治医に見せると、「どう感じているか」を言葉にしやすくなります。 家族の中で意見が分かれたときにも、同じものを見て話せます。
ここからは、論文ではなく、私が診察で見てきた経験です。病気によって違いますが、次のような変化が重なってくると、ご家族と「これからのこと」を話し始めることが多いです。
これらは「最期のサイン」と決まったものではなく、治療やケアで良くなることもあります。気づいたら、まず主治医に「こういう変化がある」と伝えてください。
「もう最期が近いから」と思っていても、つらさを和らげる方法がある場合があります。夜間でも、病院に連絡してください。
最期の時期に、獣医師がご家族と話す道は、大きく分けて3つです。AAFPのガイドラインでも、最後の章で、緩和ケア・ホスピス・安楽死と、それを決めるための話し合いが取り上げられています。[2]
検査をして、点滴や薬などの治療を続ける道です。
良くなる見込みがある、本人が治療をいやがりすぎていない、ご家族の「4つの余裕」がまだある、というときに選ばれやすいです
「どこまで続けるか」を、ときどき主治医と見直すことが大切です
病気を治すことより、残りの時間を少しでも楽に、その子らしく過ごすことを目標にする道です。
痛み止め、吐き気止め、食欲を助ける薬、家でできる点滴など、つらさを減らすための治療は続けることがあります
通院の回数を減らす、苦手な検査はしない、と決めることもできます
「治療をやめる=見捨てる」ではありません。目標を変えるだけです
安楽死という言葉を口にするだけで、罪悪感を持つ飼い主さんは少なくありません。
でも、つらさを和らげる方法を尽くしても、本人が苦しい時間が長くなってしまうとき、安楽死は「その子のために」考えられる選択肢の一つです。
選ぶかどうかは、ご家族が決めることです。獣医師がすすめることも、責めることもありません
考えていることを主治医に話しても大丈夫です。話したからといって、すぐに決めなければいけないわけではありません
どこで(病院か、家に来てもらえるか)、誰がそばにいられるか、どんな流れになるかは、事前に聞いておくことができます
迷ったまま決められないときは、「もう少し様子を見る」も立派な答えです
一番後悔が残りやすいのは、夜中に急に具合が悪くなって、何も決まっていないまま判断しなければいけないときです。
まだ落ち着いているうちに、次の5つを家族で話しておいてください。
家族の意見が違っても大丈夫です。話した、ということ自体が、あとで「ちゃんと考えてあげた」と思える支えになります。
診察のときに聞きにくい質問ほど、メモにして持っていくのがおすすめです。
どんなに準備をしても、見送ったあとには「もっとこうできていたら」が残ります。
もっと早く病院に連れていけばよかった
最後の検査はしなくてよかった
安楽死を選んだのは、早すぎたのかもしれない
安楽死を選ばなかったから、苦しませたのかもしれない
お金や仕事のことを考えてしまった
診察室で、どれも聞いてきました。同じ選択をしても、後悔する方もいれば、しない方もいます。 それは、選んだ答えが間違っていたからではありません。
その子のことをずっと考えて、迷って、ご家族の暮らしと両方を守りながら決めた。それ以上のことは、誰にもできなかったと思います。
つらい気持ちが長く続くとき、眠れない・食べられない日が続くときは、ひとりで抱えないでください。家族や友人、主治医に話すことも、大切な看取りの一部です。
「その時」が一日で分かる線はない。毎日の「いい日・つらい日」を記録すると見えてくる
猫は痛みを隠す。耳と目を中心に、顔の変化を見る。 元気なときの顔の写真を撮っておく
お金・時間・気持ち・体力の4つの余裕を考えるのは、わがままではない
治療を続ける・つらさを和らげる・安楽死、どれもその子を想って選ぶ道
元気なうちに家族で5つのことを話しておく
聞きにくいことほど、メモにして主治医に聞いていい
この記事が、大事な子との残りの時間を、少しでも穏やかに過ごすための助けになればうれしいです。
・かかりつけに行く前に迷ったら
・通院がつらい子の再診や相談に
この記事を書いている獣医師RIAIに、おうちから相談できます。
例:通院がつらくなってきた子で、これからのケアを主治医とどう話せばいいか整理したいとき
お空に行ってしまった後に、気持ちの整理をしたい時、
亡くなった理由を一緒に考えて欲しいとき、
ぜひご相談ください。
このコラムを執筆したのは
獣医師 岡本理愛この獣医さんに診察してもらう
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