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腎臓の数値は、1回の検査だけで判断するものではありません。
「1回高かった=腎臓病」ではないこと、逆に「基準値内=安心」とも言い切れないことを、まず覚えておいてください。
2026年のガイドラインでは、7歳以上の猫は、症状がなくても、定期的に体重・血液検査・尿検査をすることがすすめられています。
腎臓病は年齢とともに増える病気で、12歳を超えた猫では、28〜81%に腎臓病があったという報告もあります。元気なうちに一度検査をしておくと、その子の「いつもの数値」が分かります。
筋肉から出る老廃物で、腎臓でこし出されておしっこに出ます。腎臓の働きが落ちると、血液のなかにたまって数値が上がります。
腎臓の働きを見る、もっとも基本の数値です。ただし、次のような弱点もあります。
比較的新しい検査項目です。クレアチニンと同じく腎臓でこし出される物質ですが、筋肉の量の影響を受けにくいのが特徴です。やせている猫で、クレアチニンが低めに出ていても、SDMAで腎臓の働きの変化に気づけることがあります。
SDMAについては、新しいガイドラインで、知っておきたい点が2つあります。
つまり、「SDMAが基準値を少し超えた=すぐ腎臓病」ではありません。SDMAだけが高い、クレアチニンだけが高い、ということもあります。どちらか1つではなく、両方と尿検査を合わせて見るのが基本です。
たんぱく質が分解されてできる老廃物です。腎臓の働きが落ちると上がりますが、食事の内容や脱水、消化管からの出血など、腎臓以外の理由でも上下します。
2026年のガイドラインでも、腎臓の働きを見る数値としては、腎臓以外の影響を受けにくいクレアチニンのほうが優先されています。
「BUNが下がったから腎臓が良くなった」「BUNが上がったから悪くなった」と、BUNだけで一喜一憂しなくて大丈夫です。BUNは、ほかの数値と合わせて見る参考の数値のひとつと考えてください。
腎臓の働きが落ちると、リンを体の外に出しにくくなり、血液のなかのリンが上がってきます。
ただし、腎臓病の初期は、体の調節のしくみが働くため、リンは基準値内にとどまっていることが多いです。そのため、リンは腎臓病を早く見つけるための数値ではありません。
リンの値は、療法食を始めるかどうかや、始めたあとにうまく管理できているかを見るときの目安になります。2026年のガイドラインでは、ステージごとにリンの目標の範囲が示されています。
療法食を食べていても、4〜6週間たって目標の範囲に入らないときは、食事以外の方法も考えます。
腎臓病の猫では、カルシウムは低いことも、正常なことも、高いこともあります。リンやホルモンのバランスとあわせて見る数値です。
新しいガイドラインでは、次の2点が示されています。
療法食を食べているから安心、ではなく、リンとカルシウムの両方を定期的に見ていくことが大切です。
リンの調節にかかわるホルモンで、最近、検査できるようになってきた項目です。
腎臓病の猫ではFGF23が高く、重症になるほど上がること、高いほど進行しやすいことが分かっています。リンが目標の範囲内でも、FGF23が高い場合は、リンの管理を見直す参考になることがあります。
一方で、2026年のガイドラインでは、FGF23は、腎臓病を早く見つけるための検査(スクリーニング検査)としてはすすめられていません。健康診断で「念のためFGF23も」というより、腎臓病と分かったあとのリンの管理に使う数値、と考えるとよいと思います。
国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)では、腎臓病を4つのステージに分けています。体調が落ち着いて脱水のないときに、くり返し測ったクレアチニンとSDMAの値で決めます。
クレアチニン(mg/dL)
SDMA(μg/dL)
ステージ1は、クレアチニンは基準値内でも、SDMAが高い、尿が薄い、画像検査で腎臓の形に変化がある、など、ほかの検査で腎臓の異常が見つかっている状態です。
また、やせた猫などで、クレアチニンに比べてSDMAが高いときは、ステージを1つ上に考えることがあります。
ここで大切なのは、ステージは「体の状態をそろった言葉で共有するための目安」だということです。同じステージでも、元気や食欲、体重の変化は猫によって違います。
腎臓の検査では、血液と同じくらい、尿検査が大切です。新しいガイドラインでも、尿検査の大切さがくり返し書かれています。
おしっこの濃さを表す数値です。腎臓には、おしっこを濃くして水分を体にとどめる働きがあります。この働きが落ちると、おしっこが薄くなります。
2026年のガイドラインでは、尿を濃くする力が落ちること(尿比重が1.035未満)は、腎臓の働きが落ちはじめた、いちばん早いサインのひとつとされています。血液検査の数値がまだ基準値内でも、尿比重が1.035未満の状態がくり返し続くときは、腎臓病の可能性を考えて、検査をくり返すきっかけになります。
ただし、次の点も知っておいてください。
血液検査だけで「腎臓は大丈夫」と判断せず、尿検査も一緒に受けることをおすすめします。病院に持っていく尿のとり方は、かかりつけに確認してください。
おしっこのなかに、どのくらいたんぱくがもれ出ているかを見る数値です。新しいガイドラインでも、たんぱく尿は、腎臓病が進みやすいかどうかに関わる大切な情報とされています。
尿は、膀胱炎などでもたんぱくが出ることがあるので、尿の沈渣(ちんさ)の検査などと合わせて判断します。
腎臓病の猫は、高血圧を合わせ持つことがあります。高血圧は、目や心臓、脳、そして腎臓そのものにも負担をかけることがあるため、腎臓病の猫では血圧も測ります。
IRISでは、収縮期血圧(上の血圧)で次のように分けています。
病院では緊張して血圧が上がることもあります(人でいう「白衣高血圧」)。
1回の測定で決めず、落ち着いた状態でくり返し測るのが基本です。
シニア猫で、腎臓病と同じくらいよく見られるのが、甲状腺機能亢進症(甲状腺のホルモンが出すぎる病気)です。2026年のガイドラインでは、この2つの関係にも詳しくふれています。
そのため、シニア猫の定期検査では、腎臓の数値と一緒に、甲状腺のホルモン(総T4)も測ることがすすめられています。「やせてきたけど、よく食べる」「よく水を飲む」というシニア猫では、腎臓と甲状腺の両方を見てもらうと安心です。
新しいガイドラインでは、腎臓病になりやすい要因(危険因子)についてもまとめられています。
歯周病は、腎臓病の原因として確定しているわけではありません。それでも、歯みがきや、定期的に口のなかをチェックしてもらうことは、口の健康のためにも大切です。
ワクチンについては、「腎臓に悪いから打たない」と自己判断するのはおすすめできません。ワクチンで防げる感染症もあります。その子の暮らし方(完全室内飼いか、ほかの猫と会うことがあるか など)に合わせて、どのワクチンを、どのくらいの間隔で打つかを、かかりつけと相談してください。
検査結果の紙をもらったら、次のことを聞いてみてください。
結果の紙は、捨てずにファイルにまとめておくのがおすすめです。病院を変えたときや、ほかの先生に相談するときにも役立ちます。
数値の変化に早く気づくためにも、ふだんの記録が役立ちます。
検査の数値を見ると、どうしても「上がった・下がった」に気持ちがふり回されてしまいますよね。
でも、数値はその子を知るための道具のひとつです。大切なのは、数値と一緒に、その子の食欲や元気、体重を見ていくことです。
分からない数値があったら、遠慮せずにかかりつけの先生に聞いてみてください。「この数値は、うちの子にとってどういう意味ですか?」と聞くことは、まったく失礼なことではありません。
「このまま強制給餌を続けていいかわからない。」 「療法食を食べてくれなくて困っている。うちの子におすすめのフードが知りたい。」 「検査の数値の意味を、もう少し詳しく知りたい」「かかりつけで腎臓病と言われたけど、他の先生にも相談してみたい」「見てて辛そうで、延命していいのかわからない。」
そんな飼い主さんのためにオンライン診察を始めました!日々進歩する獣医学的知識を学んでおりますので、ぜひ信頼してご相談ください(^・o・^)ノ"
このコラムを執筆したのは
獣医師 岡本理愛この獣医さんに診察してもらう
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