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腎臓病の猫が療法食を食べてくれないとき|獣医師が見る切り替えのコツと相談の目安

腎臓病の猫が療法食を食べてくれないとき|獣医師が見る切り替えのコツと相談の目安

療法食とは、どんなごはんか

慢性腎臓病(CKD)は、腎臓の働きがゆっくり低下していく病気です。どんな病気かは、こちらの記事にまとめています。

腎臓病用の療法食は、腎臓に負担をかけにくいように、おもに次のような点を調整して作られています。

  • リン:腎臓の働きが落ちると、体の外に出しにくくなる成分です。療法食では量を控えめにしています
  • たんぱく質:量を調整しつつ、質のよいたんぱく質を使う設計が多いです
  • ナトリウム(塩分):控えめに調整されていることが多いです
  • カロリー:少ない量でもエネルギーをとりやすいよう、工夫されているものがあります

療法食は、「獣医師の指導のもとで与えること」が前提のごはんです。一般のフードとは位置づけが違うので、始める・やめる・別の銘柄に変えるときは、かかりつけの獣医師と相談しながら進めてください。

いつから始めるもの?

国際的な獣医腎臓病の研究グループ(IRIS)のガイドラインでは、腎臓病の段階(ステージ)に応じて、腎臓病用の食事を検討することがすすめられています。腎臓病用の食事について、ステージ2〜3の猫を対象にした研究で、よい結果が報告されています。

ただし、いつから始めるかは、血液検査・尿検査の結果や、その猫の体重・食欲・ほかの病気などによって変わります。「腎臓の数値が少し高いと言われたから、自己判断で療法食に変える」のではなく、始める時期も獣医師と決めましょう。

まず見分けたい「食べない理由」

療法食を食べないとき、理由は大きく2つに分けられます。

A. 療法食の「味」が合わない

  • いままでのごはんは食べるのに、療法食だけ残す
  • 療法食のにおいをかいで、ぷいっと離れる
  • それ以外は元気で、水もおしっこもいつもどおり

リンやたんぱく質を調整しているぶん、療法食は、いままでのごはんと風味が変わることがあります。 猫は食べ慣れたものを好む傾向もあるため、急に切り替えると食べないことがあります。この場合は、次の「切り替えのコツ」が役に立ちます。

B. 体調のせいで「食欲そのもの」が落ちている

  • 療法食に限らず、いままでのごはんや好きなおやつも食べない
  • ごはんの前まで来るのに、口をつけずに離れる
  • よだれが増えた、口のにおいが強くなった、吐く回数が増えた
  • 体重が減ってきた、寝ている時間が増えた

腎臓病が進むと、吐き気や口のなかの不快感などで、ごはん全体を食べにくくなることがあると言われています。この場合は、ごはんの工夫だけで解決しようとせず、早めに相談してください。診察のなかで、吐き気や食欲について相談できることもあります。

AかBか、はっきり分からないことも多いです。迷ったら「いつものごはんは食べるか」を、ひとつの目安にしてみてください。

切り替えのコツ

1. 少しずつ混ぜる

いまのごはんに療法食を少量混ぜるところから始めて、1〜2週間ほどかけて割合を増やしていく方法がよく使われます。

 

これはあくまで一例です。途中で食べる量が落ちたら、ひとつ前の割合に戻して、もっとゆっくり進めて大丈夫です。

 2. 体調が悪いときに「新しいごはん」を始めない

吐き気があるときや、入院中・通院直後などに新しいごはんを出すと、そのごはん自体を嫌いになってしまうことがあると言われています。体調が落ち着いているタイミングを選んで始めるのがおすすめです。もし入院中に療法食をすすめられたら、「家に帰って落ち着いてから切り替えてもよいか」を相談してみてください。

3. 温度・形・器を変えてみる

  • 温度:ウェットタイプは、人肌くらいに少し温めると、香りが立って食べやすくなることがあります。電子レンジで温めたときは、なかが熱くなっていないか、よく混ぜて確かめてから出してください
  • 形:同じシリーズでも、ドライ・ウェット(パウチ・缶)・粒の形が違うものがあります。ドライはだめでもウェットなら食べる、ということもあります
  • 器:ひげが当たりにくい、浅くて広めの器に変えてみる。シニア猫なら、少し高さのある器だと首を下げずに食べられます
  • 新鮮さ:ウェットは出しっぱなしにすると、においが変わって食べなくなることがあります。少量ずつ出して、残ったものは片づけましょう

ウェットタイプは、ごはんから水分もとれるのがよいところです。腎臓病の猫では、水分をとりやすくする工夫もすすめられています。

4. 食べる「場所」と「回数」を見直す

  • 静かで、ほかの猫や人の出入りが少ない場所で食べられるか
  • トイレや給水器のすぐ近くに、ごはんを置いていないか
  • 多頭飼いの場合、ほかの猫に先に食べられていないか(逆に、ほかの猫が療法食を食べていないか)
  • 1回にたくさん出すより、少量を1日数回に分けたほうが食べる猫もいます

5. 1種類にこだわらない

療法食には、いくつかのメーカー・味・形があります。1つを食べなくても、別のものなら食べることがあります。成分の設計は銘柄によって違うので、どれを試すかは、かかりつけの獣医師と相談しながら選んでください。試供品や少量パックを用意している病院もあるので、聞いてみるのもひとつの方法です。

6. いつものおやつ・トッピングは相談してから

食べてほしい一心で、いつものおやつや別のごはんを足したくなりますよね。ただ、足すものによっては、療法食で調整している成分のバランスが変わってしまいます。何をどのくらい足してよいかは、獣医師に確認してからにしましょう。

腎臓が気になる猫のおやつの選び方は、シリーズの別の回でまとめていきます。

無理に食べさせない、という選択も大切

「療法食を食べないなら、何も食べさせない」は、おすすめできません。猫は、食べない状態が続くと体に負担がかかりやすいと言われています。

療法食がどうしても進まないときに、いまのごはんを続けるか、別の方法を考えるかは、その猫の状態によって変わります。食べられない状態が長く続く場合には、栄養をとるための別の方法(栄養チューブなど)を、選択肢として提案されることもあります。

「療法食を食べさせられない自分はだめだ」と思う必要はありません。ひとりで抱えこまず、かかりつけの獣医師に「食べてくれない」ことをそのまま伝えてください。

記録をつけると、相談がスムーズに

切り替え中は、次のような簡単な記録をつけておくと、変化に気づきやすく、病院でも状況が伝わりやすくなります。

食べた量は「完食・半分・ひと口・食べない」くらいの大まかさで十分です。体重は週に1回など、同じ条件で量れると安心です。

よくある質問

Q. 療法食に飽きたみたい。前は食べていたのに

同じ療法食を食べ続けて、急に食べなくなることもあります。別の味・形の療法食に変えることで食べる場合もありますが、まずは「ほかのごはんやおやつは食べるか」「体調の変化はないか」を見てください。療法食以外も食べないなら、上の「B」にあたるかもしれません。

Q. 療法食をやめて、いままでのごはんに戻してもいい?

療法食をやめるかどうかは、その猫の状態と、食べられるかどうかのバランスで決めることです。自己判断でやめずに、「なぜ戻したいのか(食べない・吐く・高い など)」を正直に伝えて、獣医師と相談してください。

Q. ほかの猫も同じ療法食を食べてしまう

健康な猫が療法食を続けて食べることは、すすめられていません。食べる場所や時間を分ける、マイクロチップや首輪のタグで扉が開く給餌器を使う、などの方法があります。

Q. 手作りごはんにしたほうがいい?

手作りで腎臓病に合わせた栄養のバランスをとるのは、とてもむずかしいと言われています。手作りを考えるときは、自己流で始めず、栄養について相談できる獣医師に相談してください。[要根拠]

こんなときは早めに相談を

  • 療法食に限らず、ごはんをほとんど食べない日が続いている
  • 吐く回数が増えた、よだれが増えた、口のにおいが強くなった
  • 水を飲む量やおしっこの量が、急に変わった
  • 体重が減ってきた
  • 元気がなく、寝ている時間が増えた

相談するときは、上の記録表や、「何を・どのくらい食べたか」「いつから食べなくなったか」のメモがあると伝わりやすくなります。

さいごに

療法食を食べてくれないと、「わたしのやり方が悪いのかな」と落ちこんでしまう飼い主さんも少なくありません。でも、食べない理由は猫それぞれで、うまくいかないのは飼い主さんのせいではありません。

切り替えは、急がなくて大丈夫です。その子のペースで、獣医師と一緒に「食べられる形」を探していきましょう。

オンラインで相談できます

「お水をよく飲むけど、病院に連れていくべき?」 「療法食を食べてくれなくて困っている。うちの子におすすめのフードが知りたい。」 「検査の数値の意味を、もう少し詳しく知りたい」「かかりつけで腎臓病と言われたけど、他の先生にも相談してみたい」「うちの子におすすめのサプリメントが知りたい。」
そんなときは、オンラインで個別に相談を受けています。腎臓病の猫ちゃんをたくさん診療してきました。また、日々新しい治療法を学んでアップデートしておりますので、ぜひ相談してください。

 

獣医師岡本理愛

このコラムを執筆したのは

獣医師 岡本理愛
  • 【経歴】
  • 2023年 国立大学共同獣医学部 獣医学科 卒業
    2023年 都内一次診療の動物病院にて勤務(犬猫の一般診療・予防医療・外科処置)
    2024年都内1.5次診療の動物病院にて勤務(一般診療・外科処置・腫瘍科診療)
  • 【資格】
  • ・獣医師免許(2023年取得)

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