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食べかすに細菌がすみついた「歯垢(しこう)」は、放っておくと固い「歯石」になり、歯ぐきの炎症(歯周病)のもとになります。
VOHC(米国獣医口腔衛生協議会)は、犬猫の歯磨きは毎日が標準としています。 一方で、毎日できない子、全部を受け入れてくれない子がいることも認めていて、定期的なら、どんな歯磨きでも、しないよりはよいという立場です。
つまり、目標は「完璧に磨く」ではなく、「少しでも続けられる形を見つける」です。
シニア猫の飼い主さんに、ぜひ知っておいてほしい研究があります。
① アメリカの約17万頭の記録を調べた研究(2018年) 動物病院の記録をさかのぼって調べたところ、歯周病がある猫は、ない猫に比べて、のちに腎臓病(慢性腎臓病)になる割合が高い傾向がありました。歯周病が進んだ段階(ステージ3〜4)の猫では、およそ1.5倍でした(Trevejo RT et al. J Am Vet Med Assoc 2018)。
② イギリスで高齢の猫148頭を追いかけた研究(2016年) 9歳以上の猫を経過観察したところ、中等度〜重度の歯の病気があることが、その後に腎臓病になることと関係していました(Finch NC et al. J Vet Intern Med 2016)。
ただし、どちらも「関係がある」ことを示した研究で、「歯周病が腎臓病の原因になる」「歯磨きをすれば腎臓病を防げる」とまでは、まだ言えません。 年齢など、ほかの要因も重なっている可能性があります。
それでも、口の中を清潔に保つことは、シニア猫の体全体の健康を考えるうえで、できることのひとつです。
腎臓病の子で歯の治療が必要になったときは、麻酔のことが心配になると思います。 小さな研究ですが、猫では処置の時間が長かった(60分以上)ときに、処置のあとも腎臓の数値(SDMA)の上昇が続いた、という報告があります(PLOS ONE 2021、犬猫あわせて31頭)。
「腎臓が悪いから、歯はそのまま」ではなく、処置の時間や点滴、麻酔前後の検査について、かかりつけとよく相談することが大切です。そして、処置が大きくなる前に、毎日のケアで歯石をためにくくしておくことが、いちばんの備えになります。
猫では「歯の吸収病巣(きゅうしゅうびょうそう)」という、歯が内側から溶けていく病気が多く見られます。歯ぐきの炎症や痛みをともなうことが多い病気です。
痛いところを歯ブラシでこすられたら、誰でも逃げます。 次のようなサインがあるときは、歯磨きを始める前に、まず動物病院で口の中を見てもらってください。
すでについてしまった歯石は、歯磨きでは取れません。動物病院での処置が必要です。なお、麻酔をかけずに歯石を取る方法は、WSAVA(世界小動物獣医師会)の歯科ガイドラインではすすめられていません。
ネットで「猫 歯磨き」と調べると、たくさんの商品が出てきます。どれも魅力的に見えますが、獣医師の目線では、タイプごとに見るところが違います。
「塗るだけ」「なめるだけ」とうたう商品もあります。 ただ、すでに固まってしまった歯石は、基本的にジェルをなめるだけでは取れません。 動物病院での処置が必要です。 パッケージの「使う前・使った後」の写真で、歯石がすっかりなくなっているものは、それだけで判断しないようにしてください。 味がついたジェルは、5段階の「ステップ4:ペーストの味に慣れる」で使うのは、よい使い方です。歯ブラシやシートと組み合わせて使ってください。
飲み水にまぜるだけ、という手軽さが魅力です。 ただ、腎臓病の子やシニアの子では、とくに注意が必要なタイプです。水の味やにおいが変わると、飲む量が減る子がいます。腎臓の子にとって、飲む水の量はとても大切です。 使う場合は、何も入れていない水の器も、別にもうひとつ置いて、飲む量が減っていないかを見てください。
いろいろな成分が配合されているものが多いタイプです。 成分の数が多いほど、どれが何に役立っているのかは分かりにくくなります。療法食を食べている子は、何が入っているかを、かかりつけに一度見せてから使ってください。 上で紹介したVOHC承認のパウダーのように、第三者の試験で確かめられているかどうかも、選ぶときの目安になります。
歯ブラシは「道具」なので、合う・合わないは猫によって変わります。 ヘッドが小さく、毛がやわらかいものが基本です。毛が全方向についている360°タイプは、角度を気にせず使えるので、はじめての方にも扱いやすいです。
歯磨きキャンセル界隈は、卒業までに時間がかかって当たり前です。今日は「ほっぺたを触ってごほうび」だけでも、立派な1歩目です。
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このコラムを執筆したのは
獣医師 岡本理愛この獣医さんに診察してもらう


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