この記事の結論
- 災害のときは、まず飼い主さん自身の安全が第一です。そのうえで、猫も一緒に避難する「同行避難」が基本です。ただし、避難所で猫と同じ部屋で過ごせるとは限りません。
- 療法食や薬が必要な猫は、災害のあと、手に入るまで時間がかかることがあります。「何日分あるか」を数字で把握して、ふだんから少し多めに持っておきましょう。
- キャリーに慣らす、健康の記録をスマートフォンにまとめておく、身元が分かるようにしておく。この3つは、今日から始められます。
- 避難したあとは、食欲・おしっこ・持病の悪化に注意。「トイレに何度も行くのに出ていない」ときは急いで相談してください。
【最新】ペット防災のガイドラインが、8年ぶりに見直し中
能登半島地震で見えた課題
2024年1月の能登半島地震では、多くの人が、ペットと一緒に避難所へ避難しました。ところが、避難所でペットを受け入れる体制やルールが整っておらず、混乱した例が多くあったと、環境省はまとめています。
- ペットの受け入れを断られた避難所があった
- あとから苦情が出て、ペットの居場所が分けられた例があった
- 自治体で、ペットとの避難の具体的な方法が決まっていなかった、飼い主への周知も足りなかった、という検証もあります
支援団体の報告では、避難所でペットと一緒に過ごす人はほとんど見られず、避難所に空きがあっても、多くの人が「車中避難」を選んでいたそうです。
改訂の原稿(案)で示されていること
こうした課題を受けて、環境省は2025年10月から2026年3月にかけて検討会を開き、ガイドラインの改訂版の原稿(案)をまとめました。飼い主さんに関係の深いポイントは、次のとおりです。(2026年10月時点では、正式な改訂版はまだ公表されていません)
- 「同行避難」と「同伴避難」の違いを、よりはっきりさせた:一緒に避難所まで行くことと、避難所でペットと過ごすことは別、という整理です(くわしくは下で説明します)
- 避難所での過ごし方を4つに整理:同じ部屋、別の部屋、屋外、ペットだけ車の中
- 避難所以外への避難(分散避難)も「避難」として位置づけ:親戚や知人の家、ホテル、自宅にとどまることも含みます
- 療法食の子は、さらに長い期間分の備えを:フードは少なくとも5日分(できれば7日分以上)、療法食などの特別なごはんが必要な子は、さらに長い期間分が必要とされています
- 「首輪だけ」では身元の証明に不十分:名前や連絡先が分かる迷子札やマイクロチップを。マイクロチップは、登録情報を最新にしておくことが必要とされています
- 車中避難の熱中症、冬の寒さへの注意
国のしくみが変わっても、災害が起きたときに猫を守れるのは、まず飼い主さんの備えです。ここからは、猫と暮らす方が、今日からできることをまとめます。
避難の基本
まず、飼い主さん自身の安全を
災害のとき、いちばん大切なのは、飼い主さん自身が無事でいることです。飼い主さんがけがをしてしまうと、猫のお世話をする人がいなくなってしまいます。
猫を探して危ない場所に戻ったり、逃げ遅れたりしないためにも、「どう連れ出すか」をふだんから決めておくことが、結果的に猫を守ることにつながります。
「同行避難」と「同伴避難」
環境省のガイドラインでは、災害のときは、ペットと一緒に避難する「同行避難」が基本とされています。
ここで知っておきたいのが、「同行避難」と「同伴避難」の違いです。改訂の原稿(案)では、次のように整理されています。
- 同行避難:ペットと一緒に、安全な場所まで避難する「行動」のこと
- 同伴避難:避難所などで、ペットを飼って世話をしている「状態」のこと。ただし、飼い主さんと同じ部屋で過ごせるという意味ではありません
同伴避難は、さらに4つに分けられています。
- 同じ部屋で過ごせる(同室飼養)
- 別の部屋で過ごす(別室飼養)
- 屋外で過ごす(屋外飼養)
- ペットだけ車の中で過ごす(ペットのみ車中飼養)
つまり、「ペットと一緒に避難所へ行ける」ことと、「避難所でペットと一緒にいられる」ことは、別の話です。避難所によっては、猫は屋外のテントや別の部屋で過ごすことになります。猫は環境の変化に敏感なので、どの形になりそうかを、ふだんから確認しておきましょう。お住まいの自治体のホームページや防災マップに、ペットを受け入れる避難所や、そのルールがのっていることがあります。
避難所だけが避難ではない:「分散避難」と「在宅避難」
改訂の原稿(案)では、避難所に行くことだけが避難ではなく、安全な親戚や知人の家、ホテルや旅館に移ることや、自宅の安全な場所にとどまることも、「避難」のひとつと整理されています(分散避難)。
家が壊れていない、浸水や土砂災害の危険がないなど、家にいても安全な場合は、自宅で過ごす「在宅避難」という選択もあります。
猫は環境の変化に敏感な動物です。慣れた家で過ごせることは、猫にとって大きな安心になります。シニア猫や持病のある猫では、なおさらです。ただし、在宅避難でも、電気や水道、ガスが止まることを考えて、備えは必要です。
災害の種類で、動き方は変わります
地震
地震は、前ぶれなく起こります。揺れがおさまったあとに気をつけたいのは、次のようなことです。
- 猫はおどろいて、家具のすき間や押し入れの奥など、思いがけない場所に隠れることがあります
- 割れたガラスや食器の破片で、肉球をけがすることがあります
- ドアや窓が開いたり、壁や窓が壊れたりして、外に逃げ出してしまうことがあります
揺れたあとは、まず部屋の出入り口を閉めて、猫が外に出られないようにしてから探すのがおすすめです。隠れている猫を無理に引っぱり出そうとすると、パニックになって、かまれたりひっかかれたりすることがあります。バスタオルでくるむ、洗濯ネットに入れるなど、安全に保護できる方法を考えておきましょう。
台風・大雨(水害)
台風や大雨は、ある程度前もって予報が出ます。そのぶん、早めに動けるのが地震との違いです。
- 自宅がハザードマップでどんな場所にあるか、ふだんから確認しておく
- 避難の情報が出る前に、キャリーや持ち出し品をそろえておく
- 猫を連れての避難は時間がかかるので、早めの避難を考える
- 浸水のおそれがあるときは、家の2階など高い場所に移動する方法もある
家のなかで、今日からできる安全対策
災害のとき、猫がけがをしたり、逃げ出したりしないために、家のなかを見直してみましょう。
- 猫がよく過ごす場所の近くに、倒れやすい家具や、落ちてきそうな物がないか
- キャットタワーや本棚は、壁や天井に固定しているか
- 窓ガラスに、飛び散りを防ぐフィルムを貼っているか
- 猫のケージやベッドを、窓ガラスのすぐそばに置いていないか
- 猫がよく隠れる場所(ベッドの下、押し入れの奥など)を、家族みんなが知っているか
最後の「隠れ場所を知っておくこと」は、意外と大切です。いざというとき、どこを探せばよいかが分かるだけで、避難にかかる時間が変わります。
留守のときに災害が起きたら
仕事や外出中に災害が起きて、すぐに家に帰れないこともあります。
- 近くに住む家族や、信頼できる友人・ご近所さんに、いざというときに猫を見てもらえるよう頼んでおく
- 合鍵をあずける、猫の隠れ場所やキャリーの場所を伝えておく
- 玄関に「室内に猫がいます」と分かるステッカーを貼っておく
- 見守りカメラがあると、外から猫のようすを確かめられることがある
持病のある猫で、とくに備えておきたいこと
1. 療法食:「何日分あるか」を数字で
腎臓病などの療法食は、ふだんから動物病院や通販で買っていることが多いと思います。災害のあとは、物流が止まったり、病院が開いていなかったりして、しばらく手に入らないことがあります。
フードと水は、少なくとも5日分、できれば7日分以上を目安に備えておくことがすすめられています。さらに、改訂の原稿(案)では、療法食などの特別なごはんが必要なペットは、それよりも長い期間分の用意が必要とされています。
また、避難所に届く支援物資のフードは、いつものごはんと同じとは限りません。療法食を食べている子は、支援物資のフードをそのまま食べさせてよいとは限らないので、「もしいつもの療法食が手に入らなかったら、代わりに何を食べさせればよいか」を、かかりつけに一度聞いておくと安心です。
計算してみましょう。
- 1日に食べる量 × 備えたい日数 = 必要な量
- たとえば、1日にウェットのパウチ2袋とドライ40gを食べる子なら、7日分で、パウチ14袋とドライ280g
ストックのコツは、次のとおりです。
- 古いものから使って、使った分を買い足す(ローリングストック)
- ドライとウェット、両方食べられる子なら、両方あると水分の確保にも役立つ
- 賞味期限を、季節の変わり目など決まったタイミングで確認する
2. 水:腎臓病の猫は、とくに多めに
腎臓病の猫は、体の水分が不足しがちで、ふだんから水をよく飲む子も多いです。災害で水道が止まると、まず困るのが水です。
猫が1日に必要とする水の量は、体重1kgあたり50mL前後がひとつの目安とされています。たとえば4kgの猫なら、1日に約200mL、7日分で約1.4Lです。
ただし、腎臓病の猫は、この目安よりたくさん飲むことがあります。一度、ふだん1日にどのくらい飲んでいるかを測っておくと、備える量が分かります。
- 朝、計量カップで量った水を器に入れる
- 次の日の朝、残った量を量って、差を出す(蒸発する分があるので、だいたいで大丈夫です)
水は、猫の分を、人の分とは別に用意しておきましょう。
3. 薬
毎日飲んでいる薬は、とぎれると体調に影響することがあります。
- 薬の予備をどのくらい持っておけるか、かかりつけに相談しておく
- 薬の名前と量を、紙とスマートフォンの両方に残しておく(避難先で別の病院にかかるときに必要です)
- 薬をあげるときに使っているもの(投薬用のおやつなど)も、一緒に備えておく
- 薬の自己判断での中止や増減はしない
4. 健康の記録
避難先や、ふだんと違う病院で診てもらうとき、その子の情報がまとまっていると、とても助かります。
- 病名、飲んでいる薬、食べている療法食の名前
- 最近の血液検査・尿検査の結果(紙のコピーか、スマートフォンで撮った写真)
- ワクチンの記録
- かかりつけの病院の名前と電話番号
- 体重
検査結果の紙は、写真に撮っておくだけでも十分です。スマートフォンに「うちの猫」というアルバムを作って、まとめておくと探しやすくなります。
5. 輸液など、おうちでケアをしている子
皮下輸液など、おうちでのケアを続けている子は、災害のときにどうするかを、かかりつけと一度話しておくと安心です。
- 必要な道具の予備をどのくらい持っておくか
- ケアができない日が続いたら、どうすればよいか
- かかりつけと連絡がとれないときに、どこに相談するか
猫の避難に必要なもの
まず持ち出したいもの(命と健康に関わるもの)
- 療法食・フード、水
- 薬
- キャリー(リュックタイプは両手が空くので、避難のときに便利です)
- 健康の記録(上のリスト)
- 猫の写真(はぐれたときの捜索や、飼い主であることの証明に使えます)
あると助かるもの
- 猫砂、ペットシーツ、ビニール袋(トイレ用。小さめの箱や段ボールでもトイレになります)
- 食器
- タオル、ブランケット(キャリーにかけると、まわりが見えずに落ち着きやすくなります)
- 洗濯ネット(暴れる子を安全に抱えたり、診察を受けたりするときに)
- においのついた、いつも使っている毛布やおもちゃ
- ウェットティッシュ、ガムテープ、マジック(ガムテープに猫の名前や連絡先を書いて、キャリーに貼れます)
- 折りたためるケージ(避難所で長く過ごすとき)
すべてを1つのバッグにまとめるのはむずかしいので、「すぐ持ち出すもの」と「あとから取りに戻れたら持ち出すもの」に分けておくのがおすすめです。多頭飼いの場合は、キャリーを頭数分用意しておきましょう。
避難所・車中泊で気をつけたいこと
避難所では
避難所には、動物が苦手な方や、アレルギーのある方もいます。おたがいに気持ちよく過ごすために、次のようなことを心がけましょう。
- 猫はキャリーやケージから出さない
- キャリーやケージに布をかけて、猫が落ち着けるようにする
- ケージのなかは、トイレ、寝る場所、ごはんの場所を分ける
- トイレのにおい対策をする(こまめに片づける、ビニール袋を二重にする)
- 飼い主どうしで、お世話や情報を共有する
車中泊では
避難所に入れないときや、猫と一緒にいたいとき、車のなかで過ごす方もいます。
- 夏の車内は、短い時間でも温度が大きく上がります。改訂の原稿(案)でも、車の中で過ごすときは熱中症への注意が必要で、飼い主さんが長い時間車を離れるときは、ペットを車以外の安全な場所に移すよう書かれています。猫だけを車に残さないでください
- 室内で暮らす猫は寒さに弱いので、冬は毛布や使い捨てカイロ(直接ふれないようにタオルで包む)などで保温を
- 冬は、エンジンをかけたまま過ごすとき、雪でマフラーがふさがれると、排気ガスが車内に入ることがあります。人と猫、両方の命に関わります
- 人も猫も、ずっと同じ姿勢でいないよう、ときどき体を動かしましょう
避難したあと、猫の体調で気をつけたいこと
慣れない場所では、猫も大きなストレスを受けます。次のようなようすが見られることがあります。
- ごはんを食べない、水を飲まない
- トイレをがまんする、トイレ以外で排せつする
- 隠れて出てこない、ずっと鳴いている
とくに気をつけたいサイン
- 何度もトイレに行くのに、おしっこが出ていない・少ししか出ない:ストレスがきっかけで、膀胱炎のような症状が出ることもあると言われています。[要根拠] おしっこがまったく出ていないときは、急いで動物病院に相談してください
- 食べない日が続く:持病のある猫では、とくに体に大きな負担になることがあります
- 水を飲む量やおしっこの量が、急に変わる:腎臓病の悪化のサインのこともあります
- 足を引きずる、肉球から血が出ている:ガラスや破片でけがをしていることがあります
災害のあと、すぐには症状が出なくても、しばらくたってから体調をくずすこともあります。家に戻れたあとも、1〜2週間ほどは、食欲やトイレのようすを注意して見てあげてください。
もし、はぐれてしまったら
災害のときは、どんなに気をつけていても、猫とはぐれてしまうことがあります。
- 自宅のまわりを、静かに、ていねいに探す。猫は遠くへ行かず、近くに隠れていることも多いです
- 夜や早朝など、まわりが静かな時間に、名前を呼びながら探す
- 保健所、動物愛護センター、警察に届け出る
- 大きな災害のときは、行政や獣医師会などが、動物の救護の窓口を設けることがあります。そこにも情報を届ける
- 写真つきの迷子のチラシを作る
マイクロチップが入っていて、登録情報が最新になっていれば、保護されたときに飼い主さんのもとへ戻れる可能性が高まります。
今日から始められる4つのこと
1. キャリーに慣らす
災害のときにいちばん困るのが、「キャリーに入ってくれない」ことです。
- キャリーを、ふだんから部屋に出しっぱなしにしておく
- なかに、いつもの毛布やおやつを入れて「安心できる場所」にする
- ときどき、キャリーに入れて短い時間だけ移動してみる
通院のときにも役立つ練習です。
2. 身元が分かるようにする
- マイクロチップを入れて、登録情報を最新にしておく(2022年6月から、ペットショップなどで販売される犬猫には装着が義務になりました。すでに飼っている猫は努力義務です)
- 首輪をつけられる子は、名前と連絡先を書いた迷子札をつける。改訂の原稿(案)では、名前や連絡先が分からない首輪だけでは、飼い主の証明として不十分とされています
- いろいろな角度から撮った写真を、スマートフォンに残しておく
マイクロチップの登録情報(住所や電話番号)が、引っ越し前のままになっていないか、一度確認してみてください。
3. 預け先・避難先を考えておく
- 避難所以外に、猫と一緒に身を寄せられる親戚や友人の家はあるか
- 一時的に預かってもらえる動物病院やペットホテルはあるか
- 家族で、誰が猫を連れて出るかを決めておく
4. 一度、実際に歩いてみる
猫をキャリーに入れて、持ち出し品と一緒に持ってみると、思った以上に重いことに気づきます。
- 猫と荷物を持って、避難所まで歩けるか
- 両手が空くか、ほかの家族の荷物と一緒に持てるか
- 多頭飼いなら、全頭を1回で連れ出せるか
天気のよい日に一度、避難所までの道を歩いてみるだけでも、いざというときの動きがイメージしやすくなります。
備えのチェックリスト
- 療法食・フードを、少なくとも5日分(できれば7日分以上)ストックしている
- ふだんの飲水量を測って、猫の分の水を備えている
- 薬の予備について、かかりつけに相談した
- 病名・薬・療法食・検査結果を、スマートフォンに残した
- かかりつけの電話番号を登録した
- キャリーを部屋に出して、慣らしはじめた
- マイクロチップの登録情報を確認した
- 猫の写真を撮った
- 家具やキャットタワーを固定した
- 猫の隠れ場所を、家族で共有した
- 留守中に猫を見てもらえる人に頼んだ
- お住まいの地域の、ペットと一緒の避難のルールと、ハザードマップを確認した
- 家族で、誰が猫を連れて出るか決めた
- 猫と荷物を持って、避難所まで歩いてみた
避難グッズのおすすめ
災害は、いつ起こるか分かりません。でも、備えは今日から少しずつ始められます。避難グッズはインターネットで販売されていることが多いのでぜひ揃えてみてください。
※この記事は一般的な情報です。お家の猫に合わせた診断や治療は、お気軽にオンライン診察でご相談ください
参考資料
- 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」の改訂等に係る検討会(令和7年10月〜令和8年3月)
- 環境省 同検討会 第4回 資料2-2「人とペットの災害対策ガイドライン」改訂版 原稿(案)(令和8年3月)
- 石川県「能登半島地震アーカイブ」ペット対策:初動対応と検証
- ピースウィンズ・ジャパン「【令和6年能登半島地震】ペットとの避難の実情と今後に向けた備え」
- 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」(2018年)
- 環境省「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」(2013年)
- 環境省「犬と猫のマイクロチップ情報登録」について(動物の愛護及び管理に関する法律、2022年6月施行)