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「腎臓病です」と言われた日に、知っておいてほしいこと|獣医師が、最初の1週間にやること・やらなくていいことを整理しました

「腎臓病です」と言われた日に、知っておいてほしいこと|獣医師が、最初の1週間にやること・やらなくていいことを整理しました

最初に知っておいてほしい3つのこと

1. 慢性腎臓病は、「今日・明日」で決まる病気とは限りません

慢性腎臓病は、何か月、何年という時間をかけて、少しずつ進んでいく病気です。 そして、進み方は猫によって大きく違います。

アメリカで、腎臓病の猫211頭のカルテをさかのぼって調べた研究があります(1)。 腎臓病と分かったときのステージ別に、生きた期間の中央値(真ん中の値)は、次のとおりでした。

  • ステージ2(の後半)で見つかった猫:1,151日(約3年)
  • ステージ3で見つかった猫:778日(約2年)
  • ステージ4で見つかった猫:103日

ただ、この数字をそのまま「うちの子の残り時間」と受け取らないでください。

  • 同じステージでも、短い子から8年以上の子まで、幅がとても大きい研究です(ステージ2では2日〜3,107日)
  • 2000〜2002年の猫のデータで、今の検査や治療とは違うところがあります
  • 「中央値」は、半分の猫がそれより長く生きた、という意味です

この研究から言えるのは、ステージ2くらいで見つかった猫は、年単位で一緒に暮らしていけることが多い、ということです。 慌てて何かを始めるより、落ち着いて準備をする時間があります。

2. 1回の検査だけで、ステージが決まらないこともあります

腎臓病の進み具合は、IRIS(国際獣医腎臓病研究グループ)が決めた「ステージ1〜4」で表します。

このステージは、状態が落ち着いている猫で、少なくとも2回の検査をもとに決めるものとされています(2)。

  • 脱水しているときは、腎臓の数値が実際より高く出ることがあります
  • 急に具合が悪くなったときの数値は、そのまま当てはめません
  • 甲状腺の病気が一緒にあると、腎臓の数値が低く出て、腎臓病が隠れていることがあります(3)

だから、初めて言われた日の数字が、ずっと続くとは限りません。 「次の検査で、もう一度確かめましょう」と言われたら、それはふつうの流れです。

3. 飼い主さんのせいでは、ありません

「ごはんが悪かったのかな」「もっと水を飲ませていれば」と考えてしまう方は、とても多いです。

でも、猫の慢性腎臓病で、いちばんはっきりしている危険因子は年齢です(3)。 12歳を超えた猫では、28〜81%に腎臓病があるという報告もあります(3)。

腎臓は、働きがかなり落ちるまで症状が出にくい臓器です。 今日分かったのは、遅すぎたからではなく、検査をしたから分かったのだと思います。

ここからは、腎臓病と言われてから最初の1週間に、具体的に何をすればいいかをまとめます。

  1. 今日やらなくていい4つのこと(ごはん・サプリ・検索・決断)
  2. 最初の1週間でやっておきたい5つのこと(記録のつけ方つき)
  3. 次の診察で聞くことリスト 12項目(スマホに保存・印刷して持っていけます)
  4. 今日のうちに病院に連絡してほしいサイン

次の診察を「何を聞けばいいか分からないまま終わる時間」にしないための記事です。

 

今日やらなくていい4つのこと

1. ごはんを、今日いっぺんに変えること

「腎臓病用のごはんにしなきゃ」と、帰り道に療法食を買って、今夜から全部切り替えたくなるかもしれません。

でも、ごはんの切り替えは、かかりつけの先生と「いつから・何を」を決めてから、少しずつが基本です。

  • 気持ち悪いときや、具合が悪いときに新しいごはんを出すと、そのごはん自体を嫌いになってしまうことがあります(4)
  • 腎臓病のステージや、尿・血圧の結果によって、療法食を始める時期は変わります
  • 今のごはんを急にやめて、食べる量が落ちるほうが、猫の体には負担になります

療法食の切り替え方は、このマガジンの第3回でくわしく書きます。

2. サプリや「腎臓にいい」ものを、まとめて買うこと

ネットには「腎臓のために」と書かれたサプリやおやつが、たくさん並んでいます。

不安なときほど、何かしてあげたくて手が伸びますよね。 でも、

  • 療法食やお薬との組み合わせで、かえって合わないものがあります
  • 根拠の強さは、商品によって大きく違います
  • 一度にいくつも始めると、体調が変わったときに、何が原因か分からなくなります

まずは何も足さずに、次の診察で「足したほうがいいものはありますか」と聞いてみてください。 サプリの考え方は、第5回でまとめています。

3. 夜中に、ひとりで検索し続けること

検索して出てくる体験談や数字は、その猫の、その時のお話です。 ステージも、年齢も、一緒にある病気も違います。

調べるのは悪いことではありません。 ただ、夜中にひとりで読んで、不安だけが大きくなっていくなら、今日はスマホを置いて、猫のそばにいてあげてください。

気になったことは、下の「聞くことリスト」にメモしておけば大丈夫です。

4. 治療のことを、今日すべて決めること

点滴、療法食、お薬、通院の回数、費用。 考えることがたくさんあって、「全部、今決めなきゃ」と感じるかもしれません。

でも、多くの場合、 次の検査で数値を確かめる → ステージを決める → それに合わせて始めることを決める という順番で進みます。

今日決めるのは、「次にいつ病院に行くか」だけで十分なことがほとんどです。

最初の1週間でやっておきたい5つのこと

1. 検査結果の紙をもらう(写真でもOK)

血液検査や尿検査の結果は、できれば紙でもらうか、スマホで写真を撮っておきましょう。

腎臓病は、1回の数字より、数字の「流れ」を見ていく病気です。 3か月後、半年後に見比べられるように、日付と一緒に保存しておくと安心です。

検査結果の見方は、第2回でくわしく書きます。

2. 体重を測る

体重は、腎臓病の猫のようすを知る、いちばん身近な手がかりです。

  • 人が猫を抱っこして体重計に乗る → 人だけで乗る → その差が猫の体重
  • 毎週同じ曜日、同じ時間帯に測ると、比べやすくなります
  • ノートやスマホのメモに、日付と一緒に書いておきます

3. 「食べた・飲んだ・出た」をメモする

毎日きっちりでなくて大丈夫です。気づいたときに、次のことをメモしておきます。

  • ごはん:だいたい何割くらい食べたか、食べ方がいつもと違わないか
  • お水:水入れの減り方(朝に入れた量と、夜に残っている量)
  • おしっこ:砂の固まりの大きさ・数
  • うんち:出た日と、硬さ
  • 吐いた:日付と回数

「いつもと違う」に気づくための、その子の「いつも」を知る記録です。

4. 次の検査の日を確認する

「次はいつ検査しますか?」と、帰る前、または電話で確認しておきましょう。 カレンダーに入れておくと、忘れずにすみます。

5. 家族に、同じことを伝える

一緒に暮らす家族がいる場合は、

  • 腎臓病と言われたこと
  • 次の検査の日
  • おやつや人の食べものを、しばらくは勝手にあげないこと

を共有しておきましょう。 家族それぞれが「よかれと思って」あげるおやつが、記録を分かりにくくしてしまうことがあります。

次の診察で聞くことリスト(12項目)

スクリーンショットや印刷をして、診察に持っていってください。 全部聞けなくても大丈夫です。気になるところに印をつけておくだけでも、話がしやすくなります。

今の状態について

  1. 今のステージは、いくつくらいですか? まだ決まっていない場合、いつ決まりますか?
  2. 尿検査(尿の濃さ・たんぱく)は、しましたか? まだなら、次にできますか?
  3. 血圧は測りましたか?
  4. 甲状腺の検査(T4)は、しましたか?
  5. 脱水はありますか?

これからのことについて
6. 次の検査は、いつ・何をしますか?
7. ごはんは、いつ・何に変えたほうがいいですか? 今のごはんは続けていいですか? 
8. 今あげているおやつ・サプリは、続けていいですか? 
9. 食欲や吐き気の手当ては、今の段階で必要ですか? 
10. 家での水分のとり方で、気をつけることはありますか?

家で見ていてほしいことについて 1
1. 家で記録しておいてほしいことは、何ですか? 
12. どんなようすになったら、次の予約を待たずに連絡したほうがいいですか?

「費用はどのくらいかかりそうですか?」も、遠慮せずに聞いてかまいません。 続けられる方法を一緒に考えるための、大事な情報です。

今日のうちに、病院に連絡してほしいサイン

次のようなときは、次の予約を待たずに、かかりつけの動物病院に連絡してください。

  • ぐったりして、ほとんど動かない
  • 丸1日以上、ほとんど食べない
  • 何度も吐く
  • おしっこが出ていない、またはトイレに何度も行くのに出ない
  • ふらつく、けいれんする
  • 急に目が見えていないようなようすがある

夜間や休日でも、迷ったら、まず電話で相談してみてください。

おわりに

腎臓病と言われた日は、飼い主さんにとって、とても長い1日だと思います。

でも、今日から始まるのは「お別れの準備」ではなく、この子と、腎臓をいたわりながら暮らしていく時間です。

オンライン診察を始めました。

「お水をよく飲むけど、病院に連れていくべき?」 「療法食を食べてくれなくて困っている。うちの子におすすめのフードが知りたい。」 「検査の数値の意味を、もう少し詳しく知りたい」「かかりつけで腎臓病と言われたけど、他の先生にも相談してみたい」「うちの子におすすめのサプリメントが知りたい。」
そんなときは、オンラインで個別に相談を受けています。

 

 

参考にした情報

(1) Boyd LM, et al. Survival in cats with naturally occurring chronic kidney disease (2000-2002). J Vet Intern Med. 2008;22(5):1111-1117. (2) International Renal Interest Society (IRIS). IRIS Staging of CKD (modified 2023). (3) Taylor S, et al. 2026 iCatCare consensus guidelines on the diagnosis and management of chronic kidney disease in cats. J Feline Med Surg. 2026;28(9). (4) Sparkes AH, et al. ISFM Consensus Guidelines on the Diagnosis and Management of Feline Chronic Kidney Disease. J Feline Med Surg. 2016;18(3):219-239.

獣医師岡本理愛

このコラムを執筆したのは

獣医師 岡本理愛
  • 【経歴】
  • 2023年 国立大学共同獣医学部 獣医学科 卒業
    2023年 都内一次診療の動物病院にて勤務(犬猫の一般診療・予防医療・外科処置)
    2024年都内1.5次診療の動物病院にて勤務(一般診療・外科処置・腫瘍科診療)
  • 【資格】
  • ・獣医師免許(2023年取得)

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