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猫は、食べない状態が続くと体に負担がかかりやすい動物だと言われています。腎臓病などの病気があると、食べられないことで体力が落ち、さらに食欲が落ちる、という悪循環になることもあります。
だからこそ、「食べない」が続くときは、様子を見すぎず相談することが大切です。そのうえで、食べられない時期をどう支えるかの方法のひとつが、強制給餌で
強制給餌は、自分から食べない猫に、シリンジ(針のない注射器)やスプーンなどで、流動食やペースト状のごはんを口に入れて食べてもらう方法です。動物病院で、おうちでのケアとしてすすめられることもあります。
この記事では、あえて「やり方」は書いていません。何を・どのくらい・どんな姿勢であげるかは、猫の体の大きさや病気、飲みこむ力によって変わるからです。始めるときは、かかりつけで実際にやって見せてもらうのがいちばん確実です。
強制給餌はがんばる価値のあるケアですが、猫にとっての負担もあります。
口に入れたごはんが、食道ではなく気管に入ってしまうことです。むせたり咳をしたりするほか、肺に入ると呼吸に影響することもあります。 嫌がって首をふる、口を閉じたまま飲みこまない、などのときは、とくに注意が必要です。
具合が悪いときや、嫌な体験と一緒に食べたものを、その後も嫌いになってしまうことがあると言われています。強制給餌で使ったごはんを、体調が戻ったあとも食べてくれない、ということが起こりえます。
毎日、嫌がる猫を押さえて口に入れるのは、猫にも飼い主さんにも大きなストレスです。抱っこやキャリーまで嫌がるようになったり、飼い主さんが疲れきってしまったりすることもあります。
嫌がる猫に、シリンジで1日に必要な量をすべてあげるのは、なかなかむずかしいものです。「がんばってあげているのに、体重が減っていく」というときは、方法を見直すサインかもしれません。
こうした理由から、海外の猫の専門家のガイドラインでは、シリンジでの強制給餌はすすめない方法とされ、必要な量をとれないときは栄養チューブを考えることがすすめられています。
もちろん、短い期間だけ、猫が嫌がらない範囲で行う場合など、強制給餌が役に立つ場面もあります。大切なのは、「続けてよいかどうか」を、猫のようすを見ながら獣医師と一緒に見直していくことです。
強制給餌をすすめられたら、次のことを聞いておくと安心です。メモして持っていくのもおすすめです。
「どのくらい嫌がったら、やめていいのか」は、聞きにくいけれど大切な質問です。遠慮せずに聞いてみてください。
呼吸がおかしいときは、時間をおかずに病院に連絡してください。
食べられない状態が長く続くときや、強制給餌で必要な量をとれないときに、栄養チューブが提案されることがあります。
栄養チューブは、細いチューブを使って、ごはんや水分を直接おなかに届ける方法です。鼻から入れるもの、首のあたりから食道に入れるものなど、いくつかの種類があり、どれが合うかは猫の状態によって獣医師が判断します。
チューブと聞くと、「そこまでしなくても」「かわいそう」と感じる方も多いと思います。その気持ちは、とても自然なものです。
一方で、栄養チューブには、次のような面もあると言われています。
「強制給餌」と「チューブ」のどちらがよいかは、猫の病気や性格、おうちの状況によって違います。できること・心配なことを正直に伝えて、獣医師と一緒に決めてみてください。
嫌がる口にごはんを入れながら、あるいはチューブの話を聞きながら、「この子にとって、これは幸せなんだろうか」「そこまでして生かすべきなのかな」と考えてしまうことがあるかもしれません。
そう思うのは、冷たいからでも、あきらめたからでもありません。その子の苦しさを、いちばん近くで見ているからこそ出てくる問いです。同じところで立ち止まる飼い主さんは、決して少なくありません。
答えの出ない問いに向き合うとき、「生かすべきか」をいきなり決めようとするより、「いま、この子はどう過ごせているか」に目を向けると、考えやすくなることがあります。獣医療では、これを生活の質(QOL)として考えます。[
たとえば、こんなことを見てみてください。
カレンダーに、その日が「いい日」なら○、「つらそうな日」なら×をつけていくだけでも、気持ちだけではなく、その子のようすの流れが見えてきます。
次のようなことは、遠慮せずに獣医師に聞いてかまいません。
治療を続けること、ケアの内容をゆるめること、苦しさをやわらげることを中心にすること。ご家族によっては、獣医師と相談しながら、安楽死について考えることもあります。どれか1つだけが正解ということはありません。
迷いが大きいときは、ほかの獣医師の意見を聞く(セカンドオピニオン)のも、ひとつの方法です。ご家族で話す時間をつくることも大切です。
どの道を選んだとしても、その子のことを考えて考えて出した答えなら、それはその子を大切に思う気持ちから出た答えです。
多くの場合、食べないことは「生きたくない」という意思ではない、と考えています。 猫が食べなくなる理由の多くは、体の側にあります。
吐き気や痛みをやわらげると、また食べ始める猫は少なくありません。それは、食べなかった理由が「意思」ではなく「つらさ」だったことを示しています。
ただ、もう1つの面もあります。 命の終わりが近づくと、体そのものが、もう多くの食べものや水を必要としなくなっていきます。人の緩和ケアでは、この時期に食べられなくなるのは自然な経過の一部と考えられています。無理に栄養を入れても、楽になるとは限らないとされています。動物でも、同じように考える獣医師は多いです。
なので、「生きたくないのか」と問うより、次の2つを順番に考えるのがいいと思います。
どちらの段階だとしても、食べなくなったのは飼い主さんのせいではありません。食べさせられないことも、その子を見捨てたことにはなりません。
食べない猫のお世話は、時間も気持ちもすり減ります。「うまくあげられなかった」「嫌われたかもしれない」と、自分を責めてしまう方も少なくありません。
うまくいかないのは、飼い主さんのせいではありません。つらいときは、「家での強制給餌がしんどい」ということも、そのまま獣医師に伝えてください。方法を見直すきっかけになります。
「このまま強制給餌を続けていいかわからない。」 「療法食を食べてくれなくて困っている。うちの子におすすめのフードが知りたい。」 「検査の数値の意味を、もう少し詳しく知りたい」「かかりつけで腎臓病と言われたけど、他の先生にも相談してみたい」「見てて辛そうで、延命していいのかわからない。」
そんなときは、オンラインで個別に診療を始めました。15分1650円からお受けしています。お気軽にご相談ください。
このコラムを執筆したのは
獣医師 岡本理愛この獣医さんに診察してもらう


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